2021.01.11 Monday
クライアントとの関係
最近、知人からこんな話を聞いた。
あるクライアント(知人から名前は聞いていない)が、今後、海外送金を自社ですることになり、特許事務所で現地代理人への支払いを立て替える必要はないという連絡をしてきたそうだ。ついては、外国出願及びその中間処理等について、事務所からの請求書には海外送金の手数料はのせないように、といってきたということだ。
基本的にこれは事務所としては大歓迎である。海外送金は金額が大きくなる上に、海外に立て替え払いしてからクライアントに請求書を発行するという手順で処理をしていると、立替金を回収するまでの期間が早くても1ヶ月、遅いと3ヶ月程度かかることがあり、事務所の資金繰りに大きな影響を及ぼす。
そうした立替金が多少とも減るということなので、これは事務所の経営にとっては好ましい。海外送金の手数料はほとんど実費なので、それを失ったとしても痛くも痒くもない。
さらに、現地からの請求書は日本の特許事務所に届くのだが、その内容等については日本の特許事務所でチェックし、請求誤りがあったり、不明な点があったりしたら特許事務所から現地に問い合わせ等をしてからクライアントに報告するように、という指示があったという。これもまた当然だ。事務所としては、現地から来たものをそのままクライアントに転送するわけにはいかない。クライアント側での処理がスムーズに行えるように、必要なチェック及び手続きは全て事務所側で行なうのが普通である。
しかし、このあとが事務所としてはつらいところだ。クライアントからは、さらに「そうしたチェック処理については手数料はなしにしてほしい」(つまりお金は払わない)といってきたそうだ。これは事務所としては大変に困る要求である。我々弁理士及び特許事務所の仕事は、モノをうって代金をいただくのではなく、手間仕事をしてその手数料をいただくということなのだ。そのへんにころがっているモノをおまけにただでお客に渡すというのとは異なり、確実に労働を費やしているのである。だから、せっかく仕事をしたのにその手数料が請求できないというのは、われわれの仕事が価値を全く生み出していないということを意味しているし、われわれからすればそんな仕事をすることに何ら意義を見出すことはできないと言わざるを得ない。
本来であればそんなことはやめてほしい、といいたいところだろうが、おそらく知人の事務所では何もいわずに受け入れるのだろう。クライアントとしてはそれで多少の得になると考えているかもしれない。しかし、クライアントの名前を知人がいわないとしても、どの弁理士がどのクライアントの仕事をしているかは皆わかっているので、なんとなくどのクライアントのことかの見当はつく。その結果、そのクライアントの企業としての評判が、我々弁理士の間でそれなりに定まってきてしまうことにもなりかねない。そんなことは企業としても望んではいないだろう。そうあってほしい。
やはり、ビジネスの相手が提供したサービスについては、適正な対価を支払うという、至極まっとうな考えが企業経営には本質的に必要だろうと思う。
ところで冒頭の立替金の話だが、現在では弊所は銀行にお願いして外国送金のための為替予約を行うことにしている。予約を行った時点で現地に支払う金額が確定するので、現地に実際の支払いをする前にクライアントに請求書を発行する。そして、クライアントから立替金に相当する入金があった後、または入金が予想される同日に、現地に支払うようにしている。こうすると預り金の管理とか、精算とかの手間がはぶけて非常に助かる。多分、外国との取引を行っている事務所のかなりの部分がこうした方法をとっていると思う。
あるクライアント(知人から名前は聞いていない)が、今後、海外送金を自社ですることになり、特許事務所で現地代理人への支払いを立て替える必要はないという連絡をしてきたそうだ。ついては、外国出願及びその中間処理等について、事務所からの請求書には海外送金の手数料はのせないように、といってきたということだ。
基本的にこれは事務所としては大歓迎である。海外送金は金額が大きくなる上に、海外に立て替え払いしてからクライアントに請求書を発行するという手順で処理をしていると、立替金を回収するまでの期間が早くても1ヶ月、遅いと3ヶ月程度かかることがあり、事務所の資金繰りに大きな影響を及ぼす。
そうした立替金が多少とも減るということなので、これは事務所の経営にとっては好ましい。海外送金の手数料はほとんど実費なので、それを失ったとしても痛くも痒くもない。
さらに、現地からの請求書は日本の特許事務所に届くのだが、その内容等については日本の特許事務所でチェックし、請求誤りがあったり、不明な点があったりしたら特許事務所から現地に問い合わせ等をしてからクライアントに報告するように、という指示があったという。これもまた当然だ。事務所としては、現地から来たものをそのままクライアントに転送するわけにはいかない。クライアント側での処理がスムーズに行えるように、必要なチェック及び手続きは全て事務所側で行なうのが普通である。
しかし、このあとが事務所としてはつらいところだ。クライアントからは、さらに「そうしたチェック処理については手数料はなしにしてほしい」(つまりお金は払わない)といってきたそうだ。これは事務所としては大変に困る要求である。我々弁理士及び特許事務所の仕事は、モノをうって代金をいただくのではなく、手間仕事をしてその手数料をいただくということなのだ。そのへんにころがっているモノをおまけにただでお客に渡すというのとは異なり、確実に労働を費やしているのである。だから、せっかく仕事をしたのにその手数料が請求できないというのは、われわれの仕事が価値を全く生み出していないということを意味しているし、われわれからすればそんな仕事をすることに何ら意義を見出すことはできないと言わざるを得ない。
本来であればそんなことはやめてほしい、といいたいところだろうが、おそらく知人の事務所では何もいわずに受け入れるのだろう。クライアントとしてはそれで多少の得になると考えているかもしれない。しかし、クライアントの名前を知人がいわないとしても、どの弁理士がどのクライアントの仕事をしているかは皆わかっているので、なんとなくどのクライアントのことかの見当はつく。その結果、そのクライアントの企業としての評判が、我々弁理士の間でそれなりに定まってきてしまうことにもなりかねない。そんなことは企業としても望んではいないだろう。そうあってほしい。
やはり、ビジネスの相手が提供したサービスについては、適正な対価を支払うという、至極まっとうな考えが企業経営には本質的に必要だろうと思う。
ところで冒頭の立替金の話だが、現在では弊所は銀行にお願いして外国送金のための為替予約を行うことにしている。予約を行った時点で現地に支払う金額が確定するので、現地に実際の支払いをする前にクライアントに請求書を発行する。そして、クライアントから立替金に相当する入金があった後、または入金が予想される同日に、現地に支払うようにしている。こうすると預り金の管理とか、精算とかの手間がはぶけて非常に助かる。多分、外国との取引を行っている事務所のかなりの部分がこうした方法をとっていると思う。