清水敏の弁理士日記

知的財産関係のニュースと、実務的心覚えとをつづる。実務的情報については、できるだけ元情報の所在を記載する。
請求項数を増加させる補正に関しその違法性を指摘することなく補正を却下した審決が取消された例
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    平成19(行ケ)10335 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年10月30日 知的財産高等裁判所

    審査官との面接において、請求項数を増加させる補正を提示してその見解を求めた際、審査官がそうした補正の違法性を指摘せず、かえって補正が認められるかのような見解を示した案件において、審判段階ではそうした補正(増項補正)の違法性のみによって、審判請求人に反論の機会も与えることなく補正を却下した審決が取消された例。増項補正の違法性について事前に審判請求人に伝えたり、拒絶理由通知を発行したりすれば、あえてそうした補正はしなかったかもしれないし、補正を撤回することも考えられ、そうした機会を与えずに、かつそれ以外の補正についての判断もせずに審判請求を棄却した審決は違法である、とする。

    注目すべきは、傍論ではあるが、以下のような見解を示している点である。

    被告が主張する増項補正が許される例外的な場合(上記(2)イ①②の場合)は, 増項補正が許される典型的な場合を例示したにすぎず,法解釈上は,それに限られ るわけではない。原告がした本件の増項補正は,補正前の特定の請求項にいわゆる 従属項を追加したものというのであるから,少なくとも従前の特許請求の範囲を全 体として拡張するものではないということができ,特許請求の範囲の減縮には文言上該当しないとしても,法解釈論として成り立ち得ない見解といえず,明らかに違法な補正であると断じ得るものでもなく,本件のような従属項を追加する補正が一般的に違法であるとする裁判例がないではないが,少なくとも,実務上,周知確立していた取扱いであるとは認められない。


    これは、最高裁判所による、訂正に関する先の判決の影響を受けたものかもしれない。
    | 清水敏 | 判例 | 12:55 | comments(1) | trackbacks(0) |
    拒絶を維持した審決を、引用文献の開示に関する認定が誤っていたとして取消した例
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      平成20(行ケ)10126 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所 (知財高裁)


      先願明細書に示された充電式リチウム電池陽極に用いる電気化学的活物質の一般式は、本願特許請求の範囲に記載された物質を含んではいるが、それは多くの活物質を含むものであって、特に本願の物質を選択すべき旨が記載されているわけではない。また、先願明細書に記載された実施例と本願発明物質とは、一部の分子構成に違いがあり、置換された原子がいずれも鉄族元素に属し,その化学的性質が似通っているとしても,直ちに両者を同一視することはできない。そうすると,先願明細書(甲2)に本願発明にかかる「充電式リチウム電池陽極に用いる電気化学的活物質」が記載され ていると認めることはできず,「…先願明細書には,…(本願発明にかかる物質)からなる充電式リチウム電池陽極に用いる電気化学的活物質も 実質的に記載されていると解するのが自然である。」との審決の認定には誤りがあることになる。さらに、この誤った認定に基づいてなされた判断も誤っており、審決は取消されるべきである。
      なお、被告は、原告が先願明細書には一般式はあってもその中の特定の組合せの実施例がないから先願明細書にはこれが記載されているとすることはで きないと主張することは,本願明細書でも実施の形態中に特許請求の範囲に記載されたものと同じ組合せのものがないのであるから、原告自ら,本願補正発明が「発明の詳細な説明」 に記載されたものでなく,特許法36条6項1号に違反しているということ を認めることになる,と主張した。判決は,特許法29条の2の適用に当たって先 願明細書にどのような発明が記載されているかの認定と本願が特許法36条 6項1号に適合するかどうかの判断は異なるものであって,先願明細書に特定の組合せの実施例が記載されていないことから直ちに本願が 特許法36条6項1号に適合しないものとなるということはない、として被告の主張を斥けた。

      | 清水敏 | 判例 | 12:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
      引例との一致点・相違点の認定に誤りがあるとして拒絶審決を取消した例
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        平成20(行ケ)10106 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所

        審決には一致点・相違点の認定に誤りがある以上,原告 主張の取消事由1は理由があり,取消事由2について判断するまでもなく, 審決は取消しを免れない。
        | 清水敏 | 判例 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
        【特許】査定系審判の審決が知財高裁で取消された判決集(2008)
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          平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月26日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10115 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月24日 知的財産高等裁判所


          平成20(行ケ)10209 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10026 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月17日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10176 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10096 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判

          平成20(行ケ)10166 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10140 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月20日 知的財産高等裁判所

          平成20(行ケ)10024 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年08月06日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10422 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年08月06日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10332 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年08月06日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10409 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月23日 知的財産高等裁判所
          補正が新規事項を加えるものであるとした審決が取消された例


          平成19(行ケ)10244 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月16日 知的財産高等裁判所
          審判合議体が、新たな拒絶理由を発見したにも関わらず、出願人に対してこれを通知せずに拒絶した審決が取消された例


          平成19(行ケ)10110 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月11日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10163 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10222 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所 

          平成19(行ケ)10248 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月23日 知的財産高等裁判所

          ・平成19(行ケ)10298 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月26日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10074 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月26日 知的財産高等裁判所

          平成19(行ケ)10237 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

          平成18(行ケ)10455 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年02月12日 知的財産高等裁判所

          平成18(行ケ)10346 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年01月31日 知的財産高等裁判所
          | 清水敏 | 判例 | 10:17 | comments(0) | trackbacks(0) |
          【特許】当事者系審判での審決が知財高裁で取り消された判決集(2008)
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            平成20(行ケ)10238 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月18日 知的財産高等裁判所 

            平成20(行ケ)10155 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月04日 知的財産高等裁判所

            平成20(行ケ)10154 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年02月04日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10386 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月29日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10258 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月28日 知的財産高等裁判所

            平成20(行ケ)10196 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月27日 知的財産高等裁判所

            平成20(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成21年01月20日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10403 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所
            平成20(行ケ)10002 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年07月09日 知的財産高等裁判所
            平成19(行ケ)10338 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月30日 知的財産高等裁判所
            平成20(行ケ)10053 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年06月12日 知的財産高等裁判所
            無効審決が取消された例

            平成19(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所
            無効審決が取消された例

            平成19(行ケ)10319 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年05月28日 知的財産高等裁判所
            無効請求を棄却した審決が取消された例

            平成19(行ケ)10241 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年05月21日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10261 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月28日 知的財産高等裁判所

            平成17(行ケ)10586 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10333 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月24日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10220 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年04月21日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10279 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月27日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10358 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月27日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10185 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月25日 知的財産高等裁判所

            平成18(行ケ)10220 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月19日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10095 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年03月12日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10181 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

            平成19(行ケ)10255 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年02月27日 知的財産高等裁判所

            平成17(行ケ)10506 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年02月21日 知的財産高等裁判所

            平成18(行ケ)10369 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年02月07日 知的財産高等裁判所
            | 清水敏 | 判例 | 08:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
            【最高裁】特許異議申立事件の係属中に訂正請求がされた場合、対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきとした事例
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              特許権者は,特許異議の申立てに対して、請求項1、2について減縮し、請求項3、4については誤記を訂正する訂正請求を行なった。特許庁審判部は、この請求項2が訂正の要件を満たしていないとして訂正請求を認めず、特許を取消した。特許権者は、訂正の可否は請求項ごとに判断すべき、として知財高裁に訴えた。しかし知財高裁でも、訂正請求は特許の全体を一体不可分として審理すべきである、として訴えを退けた。特許権者は最高裁に上告受理の申立てをした。

              最高裁の判決では、知財高裁の判決を破棄し、特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂 正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の 範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個 別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されないというべきである、として特許権者の主張を認め、請求項1に関する訂正を認めなかった原審判決を取消した。

              本件は、これまで一体として判断すべきとされていた訂正請求について、請求項ごとに訂正の可否を判断すべきとした点で画期的な判決である。ただし、この判決ではまた、「訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126
              条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審
              判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のも
              のとして取り扱うことが予定されている」とも述べており、独立した訂正審判請求では、依然として全体を一体不可分のものとして取り扱うべきことが明らかにされている。

              本件は特許異議申立に対する訂正請求に係るものであるために請求項ごとの訂正が許される、とされたものであって、無効審判に対する防御としての訂正請求においても同様に請求項ごとに訂正の可否が判断されると考えられるものの、独立した訂正審判では、請求項ごとの訂正の可否は判断されない、と考えるべきであろう。
              | 清水敏 | 判例 | 08:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
              「除く」形式の訂正が認められた判決例
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                平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成20年05月30日 知的財産高等裁判所
                 訂正前のクレームから、公知文献に開示されたものを除外するための「除く」形式のクレーム訂正が認められた例。「除く」形式の訂正が適法と認められるための要件などが開示されている。判決中に誤字があるのはご愛嬌。

                この事件に関する判決評釈
                知財高裁詳報.「ソルダーレジスト(除くクレーム)事件」.L&T.No. 40. PP. 84-90, 2008/07
                | 清水敏 | 判例 | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0) |
                訂正審決を受けた再審請求が侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして許されなかった事例
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                  平成18(受)1772 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成20年04月24日 最高裁判所第一小法廷

                   上告人は、自己の特許権を侵害しているとして、差止めを求めて被上告人を訴えた。第1審で被上告人は特許権に無効理由があると主張し、それが認められた。上告人は、第1審判決後、訂正審判を請求するとともに控訴した。
                   控訴審の審理中に、訂正審判については何回か出し直しされ、控訴審の判決(控訴人敗訴)後に訂正を認める審決が出され、確定した。ただしこの間、控訴審の口頭弁論終結までに、上告人は控訴審で訂正審判により訂正された後の特許権に基づく侵害の主張立証をしなかった。
                   上告人は、訂正審決の確定を受け、控訴審判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたものとして,民訴法338条1項8号に規定する再審事由があるといえるから,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある(民訴法325条2項)として上告した。

                  上告審では、次のような判断がされた。(傍線は判決による。)

                  そうすると,上告人は,第1審においても,被上告人らの無効主張に対して 対抗主張を提出することができたのであり,上記特許法104条の3の規定の趣旨
                  に照らすと,少なくとも第1審判決によって上記無効主張が採用された後の原審の 審理においては,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を理由とするものを含め て早期に対抗主張を提出すべきであったと解される。そして,本件訂正審決の内容 や上告人が1年以上に及ぶ原審の審理期間中に2度にわたって訂正審判請求とその取下げを繰り返したことにかんがみると,上告人が本件訂正審判請求に係る対抗主張を原審の口頭弁論終結前に提出しなかったことを正当化する理由は何ら見いだすことができない。したがって,上告人が本件訂正審決が確定したことを理由に原審の判断を争うことは,原審の審理中にそれも早期に提出すべきであった対抗主張を原判決言渡し後に提出するに等しく,上告人と被上告人らとの間の本件特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものといわざるを得ず,上記特許法104条の3の規定の趣旨に照らしてこれを許すことはできない。


                  紛争を早期に解決することを主目的とすると、訂正の内容にもよるが、侵害裁判で被告が無効主張を行なったときには、権利者は訂正まで考慮した形で対抗主張をする必要があるということだろう。今まで、被告側で無効審判を請求すべきか否かについての議論は随分されてきたが、権利者側が訂正の内容を考慮した対抗主張を侵害裁判で行なう必要があるか否かについての議論はそれほどなかったように思う。研修ではそうしたことが話題になったことはあるが、現実にこうした判決が出ていることに鑑みると、権利者側も相手が無効主張をしてきたときには、訂正まで考慮したかたちで侵害裁判の進行を考える必要がある。
                  | 清水敏 | 判例 | 12:41 | comments(0) | trackbacks(0) |
                  追納期限経過後に提出された特許料納付書に対する却下処分が維持された例
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                    平成19年(行ウ)第56号特許料納付書却下処分取消請求事件

                    特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」とは、天災地変や本人の重篤のような客観的理由により手続をすることができない場合のほか、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払ってもなお追納期間内に納付をすることができなかった場合を意味すると解するのが相当であり、年金管理を第三者に委託した権利者が、その第三者の過失により特許料の納付ができなかった場合には、権利者に特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」があったとはいえない、として特許料の追納を認めなかったケース。

                    法律上の代理人による行為の法律効果が本人に及ぶ例。年金管理の重要性と、特許事務所等による管理責任の重大さとが明確に理解できる。

                    <経緯>
                    原告は、問題となる日本の特許権(本件特許権)及びその対応外国特許権について、平成16年に権利者から譲り受けた。本件特許権の第5年分の特許料の納付期限は平成16年10月20日、追納期間は平成17年4月20日までであったところ、原告も、先の特権者も上記追納期限までに特許料を納付しなかった。
                     平成17年6月13日付で、原告は、本件特許権の第5年分の特許料等の納付書を提出したところ、平成17年9月5日付でこの納付書が却下された。原告はこの却下処分に対し、行政不服審査法に基づく異議申立を行ったが、特許庁長官はこの意義申立を棄却する旨の決定をした。この決定に対して原告が却下処分の取消を求めて本件裁判を提起した。
                    <結論>
                    原告の請求棄却。
                    <理由>
                     特許法112条の2第1項にいう「その責めに帰することができない理由」は、その文言の国語上の通常の意味、訴訟行為の追完を定めた民事訴訟法97条1項の「その責めに帰することができない事由」の解釈及び拒絶査定不服審判や再審の請求期間についての同種の規定(特許法121条2項、173条2項)において一般に採用されている解釈に照らせば、天災地変や本人の重篤のような客観的理由により手続をすることができない場合のほか、通常の注意力を有する当事者が万全の注意を払ってもなお追納期間内に納付をすることができなかった場合を意味すると解するのが相当である。
                     原告は、本件特許権の年金管理をC事務所に委託していたものの、C事務所が特許料支払いについてのリマインダーを所定の時期に原告に送付しなかったため、追納期間内にも特許料の納付ができなかった。C事務所は、本件特許権の年金管理を善良な管理者としての注意義務を尽くして遂行すべきところ、原告にかかる通知を行わなかったことについて過失があることは明らかである。原告は、本来自らなすべき特許権の管理を、自らの判断と責任においてC事務所に委託したのであるから、C事務所の過失は原告の過失と同視でき、万全の注意を払っていても特許料等を納付できなかったとはいえないことが明らかであり、「その責めに帰することができない理由」(法112条の2第1項)があるということはできない。
                    | 清水敏 | 判例 | 11:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
                    【知財高裁】「平均粒径」という語では一義的にその意味が決まらないとした特許取消決定が取り消された例
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                      平成17年(行ケ)第10661号 特許取消決定取消請求事件

                      原告は「水架橋性不飽和アルコキシラングラフト直鎖状低密度エチレンーアルファーオレフィン共重合体の製造方法及び水架橋成形物」という特許第3456774号の特許権者である。

                      この特許に対し特許異議の申し立てがあり、特許庁は、本件特許の特許の請求の範囲の記載について、触媒担体及びグラニュラー状物の平均粒径を特定の範囲に限定しているが、明細書において、この平均粒径について、その測定法について記載がなく、平均粒径には様々な種類があるのであるから、いずれの意味の平均粒径かは不明であり一義的に決まるものではない、として本件特許を取り消した。出願人は知財高裁に審決取消しの訴えを提起した。

                      裁判では、本件重合方法は、出願当時に周知のユニポール法によるものであることがあきらかで、ユニポール法では、担体及び生成物の「平均粒径」を「ふるい分け法」によって測定するのが当業者にとって通常であるから、そのように理解するのが自然かつ合理的であるとして、決定を取り消した。

                      なお、元の取消し決定では、決定の根拠の1つとして「別件判決」として東京高裁平成17年3月30日判決・平成16年(行ケ)第290号を挙げている。この判決と同日に出された同一当事者の別の判決についてはすでにその内容を紹介しているが、そこでは元の取消し決定のいうように、単に「平均粒径」と記載されているだけではその意味は不明である、と判示されている。

                      今回の判決は、同じ「平均粒径」という記載しかない場合であっても、当業者にとってどのような意味であるかについての通常の理解がされるのであれば、一義的にその意味として理解することが適当である、としたものである。その点はたしかに別件判決でも留保の記載があった。

                      教訓
                      ・明細書を書く際には、使用している用語の意義について確認し、複数通りに解釈される余地があれば、できるだけ定義を与えておくこと。
                      ・不幸にして、一義的に意味を決めることができない、という拒絶査定または審決を受けたら、当業者にとってその用語を一義的に理解することが通常である、とする反論を、適切な証拠を挙げながら行うこと。
                      ・先の判例中で自己の主張にとって都合のよい判示事項があっても、その適用は事情により異なる。特に、先の判決の判示の際の留保事項に注意しておくこと。
                      | 清水敏 | 判例 | 00:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
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                      中野 信子
                      この本を読みながら、最近のニュースに出てきたあの人、この人を思い出した。ところで、サイコパスとは関係ないのだが、この本によれば日本は全世界の面積の0.25%しか占めていないのに、災害被害総額では15〜20%を占めているそうだ。最近の噴火、地震、豪雨の連続を見ていると納得してしまうが、一応この数字はどこかでチェックしておく必要がある。
                      そこで調べて見た。一般財団法人国土技術研究センターによると、世界における日本の国土の占める割合は0.28%だそうだ。Wikipediaでは0.25%と記載されている。ここは国土技術研究センターを信用したい。一方、内閣府によると、日本の災害被害額が世界の災害被害額に占める割合は16%だそうだ。この数字はちょっと古いが、それでも大筋で15〜20%という値は正しそうだ。
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