堂島特許事務所の日常(堂島亭日乗)

知的財産関係のニュースと、実務的心覚えとをつづる。実務的情報については、できるだけ元情報の所在を記載する。弁理士の仕事に関する話はあまり書けないことがわかったので、これからはただの日記にする。
図書検索をして驚いた話
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    仕事で読みたい技術関係の本(「談話と対話」)があったのだけれど、書店で探しても、オンラインで探してもみつからない。仕方がないので、兵庫県図書館の横断検索をしたところ、兵庫県立図書館と4大学にあることがわかった。でも、大学の図書館を利用するのはすこし面倒だし、兵庫県立図書館は少し遠い。

    そこで、大阪府内で横断検索したところ、府立図書館と市立図書館、それになぜか河内長野図書館にあった。府立図書館でもう一度検索したところ、目的の本とともに、もう1冊、読みたい本が検索結果に表示されていた。その本のタイトルに見覚えがあり、事務所内にあるような気がして探してみたところ、驚くべき結果に。

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    | 清水敏 | 図書 | 08:56 | comments(0) | - |

    いちからわかる・使える「契約」Q&A
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      知り合いの鳥山半六弁護士が出版された本である。

      読んでみて面白かったし、難しい本と比較してかえって記憶に残るので是非紹介したい、

      Q & Aとあるとおり、一問一答の形で契約に関して気をつけるべき勘所について、わかりやすく、語りかけるように記載されている。普通、弁理士の仕事は、表面的には契約とそれほど縁が深いわけではないが、この本に記載されていることの多くは、明細書を書く上でも参考になる。特許出願の明細書は技術文書であると同時に法律文書でもある。特に特許請求の範囲となると契約書的なものに近い性質もあるように思う。

      最近は特に忙しく、なかなか本を読む時間も取れない。鳥山先生からこの本をいただいたときも忙しかったのだけれど、ちょっと見るつもりが、面白くて結局全部読んでしまった。おかげで少し仕事が遅れてしまったが、それだけ得るものもあった。

      弁理士であれば、この本に目を通しておいても決して損はしないと思う。

      | 清水敏 | 図書 | 13:15 | comments(0) | - |

      変貌する日本のイノベーション・システム
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        日本における特許出願の数は2005年の427,078件をピークにほぼ毎年減少を続け、2020年には288,472件まで落ち込んだ。2005年当時には日本の出願件数の半分程度であった米国への特許出願数は、この間も順調に増え続け、今では逆に日本の倍程度の597,000件程度となっている。今や米国に次ぐ2番めの経済大国となった中国では、他の国とは桁違いの特許出願の伸びを示し、毎年150万件程度の特許出願がある。むかし、私がまだ元気だったころ、各国のGDPと特許出願の数との関係を調べたことがあったが、両者の間にはみごとな相関関係があった。つまりある国の年間の特許出願数は、GDPの動きとみごとに一致していたのである。それを考えると、現在の日本はやはり元気がないのではないかと考える。
         とはいっても、これは私が弁理士であるために、特許出願が少ないと私の元気もなくなるという、明らかな因果関係に影響された悲観的な考えなのかもしれない。それに対して、イノベーション・システムというキーワードを使用して客観的な情報に基づいて日本には元気があるのかないのか、以前と比較してより元気なのか、より元気がないのかを明らかにしようとしたのがこの本(変貌する日本のイノベーション・システム)である。
         イノベーション・システム(NIS)とは、「一国のイノベーション活動にかかわる、民間セクター、アカデミック・セクター、そして公的セクターの様々な組織や制度、それらの相互作用からなるネットワーク」のことをいう。そしてこの本では、著者は、「日本のイノベーションシステムが“ジャパン・アズ・ナンバーワン”(Vogel. 1979)と呼ばれた1970年代末から"失われた20年”を超え、現在(2018年)までの間にどのような方向に変化したのか(しなかったのか)を点検することによって、"日本的経営”や“日本の強みと弱み」の現状などを明らかにする」こと、及び「その結果から、今後、必要とされるイノベーション政策やシステム改革に対するインプリケーションを得る」ことを目的とすると述べている。
         そのために第1章では日本のイノベーション・システムの今後の役割に関する問題提起をし、第2章では日本のイノベーションの諸相をめぐる長期的変化と題して、1980年代から現在までを対象として、主としてマクロのパフォーマンスの視点、産業構造の視点、イノベーションの総合指標とインプット・アウトプット指標という3つの視点から日本の長期的変化を概観する。これを受けて、続く第3章及び第4章では日本の企業における研究開発と雇用・経営の分析、ベンチャー企業の役割とその変化に関する検討が加えられ、第5章及び第6章では科学技術人材の供給と基礎研究のスピルオーバーという視点から、大学の役割と現在の問題点、さらに大学から産業界への人材及び知識の移転について検討がされ、第7章から第9章では、公的研究期間、政府調達、そしてイノベーションを生み出すための制度が検討されている。最後の第10章には、変貌するイノベーション・システムと日本の将来と題して、現在の日本のイノベーションシステムの課題と今後についての考察が述べられている。
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        | 清水敏 | 図書 | 14:58 | comments(0) | - |

        オノマトペ 擬音・擬態語を楽しむ
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          日本語には豊かなオノマトペがある、というのはまだ不足で、実はオノマトペなしでは日本語によるコミュニケーションは機能不全に陥るのではないか。この本を読むとそう思う。

          広告、コマーシャル、新聞の見出し、会話、どれをとってもオノマトペにあふれている。オノマトペなしではいきいきした会話もできない。

          このように日本語では重要な役目を果たしているオノマトペだが、大体の人はオノマトペについて深く考えたことがないはずだ。それを深く楽しく考えたのがこの本である。

          まず、オノマトペが広告、コマーシャル、新聞の見出しによく使われているのは、オノマトペが簡潔な表現で、人が見ただけですぐにその内容が理解できるような具体的な描写力を持っていることが挙げられる。確かに新聞広告はあの狭い広告欄で潜在的読者にアピールする必要があるし、テレビコマーシャルは短い時間でいかに消費者に商品名を訴えるかが問題だし、新聞にいたっては記事を読ませるために見出しを工夫しなければならないだけではなく、記事を読まなくてもその内容が読者にある程度伝わらないと行けないという使命がある。そのような条件にぴったりなのがオノマトペなのだ。

          我々は、普段、オノマトペを何も考えずに使っている。しかし、実はその使い方、使われ方には結構はっきりとした相違があるということだ。例えば「きらきら」と「ぴかぴか」の使われ方の違いとか、「ざわざわ」→「ざわつく」、「にやにや」→「にやつく」、「がたがた」→「がたつく」という関係があるのに、「ほかほか」→「ほかつく」、「にこにこ」→「にこつく」、「そよそよ」→「そよつく」という関係はない、これはどうしたわけか、とか。

          あまり考えずに使っているにもかかわらずちゃんと使い分けているところが日本語ネイティブなのだろうが、その理屈というか現象の整理とかをこの本を参考にして見るもの面白いかもしれない。

          とはいうものの、あまり時間もない。どんどん新規出願を受任し、すらすら明細書を書いて、バンバン出願し、ばしばし請求書を発行し、ざくざくお金が入ればニコニコなのですが。
          | 清水敏 | 図書 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(0) |

          脳が壊れた
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            といっても私の脳が壊れたわけではない。というかこれ以上壊れない。

            この本は、41歳にして脳梗塞をわずらい、若干の後遺症に悩むルポライタの実録である。私がここでこの本について紹介しようと思ったのは、この本に「むむ、これはやばい」と思った記載があったためである。その部分について引用させてもらう。
            とはいえ、僕にとってはこのウォーキングと、歩きの延長的なジョギングは「性格改善」と併行のリハビリだったように思う。何しろ病前は街中でジョギングなどをしても、人目があればあるほどペースが上がってしまうタイプ(誰も見てないのにカッコつけ)。歩きと大差ないペースで走る姿を人に見られるのは、かつて走れた経験があるだけに屈辱的だ(だから誰も見てないというのに!)。

             これはこのまま私に当てはまる。ジョギングをするとペースを上げなければ気が済まない。人目があればあるほどそうなる。歩くような速度でゆっくり走っているジョガーを見ると、「けしからん」と思う。それでいて、ペースをあげて走ると苦しいので結局あんまり走らない。これは私もとってもよく自覚していたところだ。

            この本によればそういう性格は実にまずいようである。というか、この本の著者が考えるに、こうした性格が脳梗塞の原因だったというのである。だから関係ないかも知れない。でも関係あるかも知れない。ということで、これからはこの点を自覚し、何事ももう少しゆっくりすることにしようと思う。

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            | 清水敏 | 図書 | 08:34 | comments(0) | trackbacks(0) |

            「丸山眞男の敗北」
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              丸山眞男といえば、私が最初の大学生だったころに文系の学生が競って読んでいた政治学者(ではなく政治史学者?)である。つられて私も「現代政治の思想と行動」を買ったが、結局その後30年の間、本棚のこやしと化していた。それもこの間売り払ってしまったが。
              この時代に丸山眞男論である。すでに私の人生からは消えていた丸山眞男だが、「丸山眞男の敗北」というタイトルにグッときて読むことになった。前半は丸山眞男の著作をその周辺まで読み込んでいい感じだったが、最後に来て著者の伊藤氏はだいぶ腰砕けになったようだ。折角の「敗北」のタイトルの味噌の部分がたよりない学生の論文のようになっていたのが残念。
              丸山眞男は逆風があるときには高く飛ぶが、風がなければ元気をなくす凧のような人だ、という点はその通りかもしれない。すでに敗戦後70年を過ぎ、風がない時期が長すぎて凧も空から消えてしまった現在、学生は丸山眞男等は全く読まないのではないか?
              そんなことを思いながら、1日で読み終えてしまった。
              | 清水敏 | 図書 | 18:23 | comments(1) | trackbacks(0) |

              現代ロシアの深層
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                評価:
                小田 健
                日本経済新聞出版社
                ¥ 6,300
                (2010-04-24)
                コメント:…まあとりあえずロシアへの出願はやめとこか、という人が多いのとちゃいまっか。そんな人にはこの本がお勧めだす、といいたいのはやまやまでっけど、残念ながらこの本は知財とはあまり関係があらしまへん…

                最近は、知財の世界でもいわゆるBricsが話題になってまんね。以前のように米国やらヨーロッパやらだけではのうて、Bricsでも知財を確保する必要があんのとちゃいまっか、という人がようけいてはります。中国への出願数がえらい勢いでびゃーっと伸びているのはどなたはんでも分かりまっしゃろ。しゃーけど、ロシアとなるとどないでっか?。なんかなぁ、ロシアっちゅう国の特許庁は審査をちゃんとしてくらはるんやろか、特許になったとして、あんじょう権利を守ることがでけんのやろか、お金もようけかかりよるし、ちゅう心配をしはって、まあとりあえずロシアへの出願はやめとこか、という人が多いのとちゃいまっか。
                そんな人にはこの本がお勧めだす、といいたいのはやまやまでっけど、残念ながらこの本は知財とはあまり関係があらしまへん。政治、経済からはじめて、現代のロシアの状況を、主に報道された事項をもとにして解説した本ですねん。知財のことなんか、今ちらっと思い出せるのはダブリュー・ティー・オーとかいうしろもんに関連して2ヶ所しか出てけーしまへん。これだけ厚く(540ページくらい。)、重い(ゆうに1キロを超えてまっせ。)本ですのに、たったの2ヶ所でっせ。まあしゃーないけど。
                書いたお方が日経国際編集委員というお方でっさかい、まあ資料とか、新聞記事とか、ウェブページとかについてはようけ引用してはります。そこを手がかりにずーっと研究したい人にはええかも知れまへんな。プーチン氏とメドベージェフ氏(今はどっちが大統領でどっちが首相でんねん?よう分かりまへんわ。)のお話から始まって、シロビキやらオリガルヒやら、普段は聞いたこともないけったいな言葉がようけ出てきまんねん。人の名前もけったいな名前ばっかりでよう覚えられまへん。同じ人の名前がときどき変わりよるし。(ところで、うちの娘の友だちが飼っている猫の名前が「プーチン」いいまんねん。病院で「プーチンちゃん」いうて呼ばなならんのが結構はずかしいんやて。そら、ロシアには連れていけまへんわなぁ。)
                せやけど、まあ、現代のロシアの経済状況のいわゆる背景のバックグラウンドというものが、なんとなく分かる気がしまんねん。これからロシアに手を伸ばそうというお方がいはったら、この本を読んで決して損はせんと思いまっせ。いや、ホントに。
                | 清水敏 | 図書 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(0) |

                岩波新書「ことばと思考」:思考と、ことばによる外界情報のカテゴライズとについて再認識
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                  評価:
                  今井 むつみ
                  岩波書店
                  ¥ 840
                  (2010-10-21)
                  コメント:前半は示唆に富み、読み進めながらスリルを覚える。後半は主に実験結果に基づく議論で、意義はあるのだが、門外漢にはやや読みにくい。

                  音声認識などの仕事をしていると、入力情報から特徴ベクトルを作り、予め準備されていたプロトタイプと比較して最も近いプロトタイプのカテゴリに入力を分類する、という処理がよく行なわれる。
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                  | 清水敏 | 図書 | 19:01 | comments(1) | trackbacks(0) |

                  だぶって本を買う
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                    Vintage Tom Swift Books Detailphoto © 2006 L. E. MacDonald | more info (via: Wylio)

                    最近は通信販売で本を買うことが多い。それも一度に15冊程度。するとどうなるか。書籍の注文と、書籍の到着との間にタイムラグが発生する。すると、既に注文しているにもかかわらず、手元にない本を再度注文してしまう、ということが発生し得る。



                    さすがに既に読んだ本をだぶって買うことはあまりないが(時々はある。)、注文したがまだ読んでいない本は結構頻繁に重ねて注文してしまう。

                    最近では

                    (1)プロテウス・オペレーション(1200円)
                    (2)脳の可塑性と記憶(960円)
                    (3)反哲学入門
                    (4)運は数学にまかせなさい

                    であった。ほしい人には進呈しますけど…
                    | 清水敏 | 図書 | 14:38 | comments(0) | trackbacks(0) |

                    【雑誌】知財ぷりずむ Vol. 6 No. 70
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                      この号では、山口大学教授 佐田洋一郎氏による「初めて知財を担当する人のための大学知財の基礎入門」が面白い。

                      我々弁理士は、普段は企業の知財担当の方とお話をする機会が多いため、ともすると知財業界以外の方とのコミュニケーションがないか、あっても極端に少ないことが多い。そのため、世間では決して常識ではない事項であるにもかかわらず、誰でも知っている事項だと思い込んだりすることもある。佐田氏の論文(半分はエッセイのような感じもするが)は、この点を改めて気づかせてくれる。

                      大学教授というのも我々弁理士と同じような人種と見えて、自分の専門については当然非常に詳しいが、特許のこととなるとあまりご存知ないことが多いらしい。佐田氏は、特許庁から山口大学に転進してそれを身にしみて経験されたようだ。それも、大学特有の問題というよりは、知財の世界を知らない人たちの考え方に再遭遇してとまどった、という経験をお持ちのようである。

                      この佐田氏の論文では、大学で知財(主に特許だが)に関してどのような事態が生じているのか、制度を知らないために知財担当者がどのように苦労されているのか、について詳しく書かれている。大学ゆえ、という問題もあるし、大学に限らず、という問題もある。我々弁理士も大学とかかわる機会が多くなっている以上、それらについて準備しておかなければならない。その点で参考になる。

                      それ以外に、この論文の後半では、審査官が引用文献に基づいてどのように進歩性を判断するか、その手法についても簡単ではあるが記載されている。電気の分野では構成を重視する審査官が多く、化学の世界では効果を重視する審査官が多い、ということなど、分野による違いについても再認識させられる。

                      普段、仕事に埋没してしまい、世間と没交渉になりかかっている弁理士の皆さんにお奨めする。
                      | 清水敏 | 図書 | 12:46 | comments(0) | trackbacks(0) |

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