堂島特許事務所の日常(堂島亭日乗)

知的財産関係のニュースと、実務的心覚えとをつづる。実務的情報については、できるだけ元情報の所在を記載する。弁理士の仕事に関する話はあまり書けないことがわかったので、これからはただの日記にする。
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増補 花押を読む (平凡社)
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    評価:
    佐藤 進一
    平凡社
    ---
    (2000-10)
    外国の代理人とのやりとりでいつもなんとなく引け目を感じるのが、書簡に書くサインである。多くの外国代理人のサインはなにやら判読しがたいものとなっている。それに対して、私のサインは中学生の書き取りのごとく、実に分かりやすい。もう少し見栄えのするサインができれば、と思い、かつて手近の紙にサインの練習をしていて、事務の女性に見つかり笑われたことがある。

    さりとて、どのようにしたら見栄えのよいサインを作れるか、という知識もなく、日々なんとなく物足りなくすごしていた。

    一方、日本には昔から花押と呼ばれる、一種のサインがあった。現在でも閣僚は閣議の書類には花押をするとか。日本はハンコ文化と呼ばれているが、どっこい花押という立派なサインの文化があったのであり、今でもほそぼそと続いているのである。

    この花押というものが、なんというか、筆を使わなくなった我々から見ると、実に堂々としており、しかも美しく感じるものが多い。

    この本は、ひょっとしたきっかけから花押を片手間に研究することになった佐藤先生の労作である(税込み1260円)。片手間とはいっても、著者は日本の中世歴史に関する専門家であって、例えば古文書などを判読する技術には非常に長けておられる。草書に関する知識も非常に深く、多くの場合、姓名の一部、特に草書体の一部をとって作成された花押の研究者としてはこれ以上はない人だろう。

    古今の有名人の花押が多数紹介されている上、そうした花押のもととなった文字に関する解釈が載せられている。中には「ホンマかいな」という位、花押の見た目のその来歴とがかけ離れているように見えるものもあるが、悲しいかなこちらは花押に関する知識も、書に関する知識も、歴史に関する知識もないので、ただ素直に受け入れるだけである。花押の世界は思いのほか深い。

    我々の仕事は、マークにも関連する。したがって、花押は我々の仕事にも関連しないというわけではない。また、日本人が文字からどのようにしてマークを生成してきたか、という点でも充分に花押は我々の興味の対象にできるものだと思う。

    しかし、そこから離れて、純粋に美的関心から花押を見るのも面白い。なんというか、えも言われぬ曲線が悩ましい花押、何の文字からできているのかさっぱりわからないが、妙に躍動感のある花押、最初に見たときは結構面白いと思ったのに、他にも似たようなものが多数あることがわかってがっかりする花押、斬新にもローマ字から作られた花押、など、なんとなく創作欲を刺激するのである。

    というわけで、現在のところ、私は、机の紙にわけの分からない花押もどきを多数書いてはシュレッダーに入れる、という生活をしているのである。
    | 清水敏 | 知財実務 | 16:52 | comments(3) | trackbacks(0) |

    はじめまして。
    「花押」でおじゃましました。
    小学生の頃から「花押」に興味を持ち、自分自身でも花押をつくり、手紙などに書いております。
    現在の花押は、2代目花押です。
    今は筆ペンで書いておりますが、いつかは筆でも書いてみたいと思っています。
    | 高畠真由美 | 2007/04/30 8:47 AM |
    高島さん、コメント下さってありがとうございます。

    私も実は、はるか以前から花押に興味を持ってはいたのですが、いかんせん作り方も分からず、何もしませんでした。最近になって英語の書簡にサインをすることが多くなり、そのたびにローマ字のつたないサインにがっかりすることが多くなり、あらためて花押を見直したということです。
     どのようにして花押を作られているのですか?よかったら教えてください。
    | 清水敏 | 2007/04/30 9:31 AM |
    毎月花押講座を銀座で開催しております。
    大臣や防衛庁の幹部の花押をおつくりになている、望月鶴川さんを講師としてお招きしております。
    http://plaza.rakuten.co.jp/takahata/13007

    ブログには、先週末の「花押展」のことも書いてありますので、ご覧いただけたら嬉しいです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

    | 高畠真由美 | 2007/05/21 12:54 PM |









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