堂島特許事務所の日常(堂島亭日乗)

知的財産関係のニュースと、実務的心覚えとをつづる。実務的情報については、できるだけ元情報の所在を記載する。弁理士の仕事に関する話はあまり書けないことがわかったので、これからはただの日記にする。
【EPO】拡大審判廷に対して複数の分割出願に関する見解を求める中間審決が出される
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    Official Journal EPO March/2007によると、EPOの審判廷は、3月30日付けで、EPC第76条(1)の第2文の規定に関して、一連の分割出願の適格性としては、先行する出願の各々に、分割出願の主題が開示されていさえすればよく、分割出願でクレームされた主題が「ネスト」されている必要はない、というセイコーの請求に理を認めながら、EPC第76条(1)の第2文に関する他の審判廷による審決との整合性がとれないとして、拡大審判廷に対し意見を求める中間判決を出した。(T 1409/05 - 3.4.03 - Sequence of divisionals/SEIKO

    拡大審判廷に求められた見解は、一連の分割出願について、

    (1)その一連の分割出願の各々が、EPCの第76条(1)の第2文の規定(分割出願の以前の出願の出願当初の主題の範囲を超えない場合のみ、分割出願可能で出願日の遡及効が得られる、とする規定)を満足することが必要かつ充分か、つまり、一連の分割出願の各々が、先行する分割出願の出願当初に開示された事項の範囲を超えない場合のみ分割可能で出願日の遡及効が得られるのか否か、

    (2)もし上の条件が充分ではないとき、第76条(1)の第2文の規定は、以下の要件が充足されることをさらに規定しているのか?
     (a)分割出願でクレームされている主題事項が、その分割出願に先立つ出願でクレームされている主題事項の中に「ネスト」されていること
     又は
     (b)先行する分割出願の全てが第76条(1)にしたがっていること。

    ということである。今回のセイコーの請求により、一連の分割出願い関するEPOでの判断が変化する可能性が出てきたようだ。

    | 清水敏 | ヨーロッパ | 19:27 | comments(0) | trackbacks(0) |

    【米国】TOP 100 IP Firms 2006
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      2006年版のMost Prestigeous Law firms(弁護士の投票による)に関しては既に報告しているが、2006年に発行された特許の件数による米国特許弁護士事務所のリストが IP Todayに載っている。

      われわれと付き合いのある事務所は、大体20位前後くらいまでに載っている。それより下の事務所で知っているのは、以下にあげる事務所くらいである。(左端の数字は順位)

      22 Morrison & Foerster
      35 Darby & Darby
      40 Westerman Hattori Daniels & Adrian
      50 Jones Day
      55 Armstrong Kratz Quintos Hanson & Brooks

      これらのうち55位のArmstrong事務所は、昨日紹介したKTKニュースに寄稿されたArmstrong三世の事務所である。ちなみに既に四世も同じ事務所にいる。
      55位のJones Dayは、ちょっと前に紹介した Marvin Bowerが最初に就職した法律事務所である。ごく最近、つきあいのある日本の弁護士がこの事務所に転職されたばかりである。
      40位の事務所は、昔Armstrong事務所と一緒だった人たちの事務所である。
      22位の事務所には、私が前にいた事務所の女性弁理士が勤務している(はず)。

      (Update: 2008/06/09 55位の事務所はさらに分裂した。Armstrong三世は、自分で事務所を開いた後急逝。Armstrong四世は別の事務所に鞍替え。
      22位の事務所にいた女性弁理士は既に日本に帰国している。)

      やはり、日本の企業の事件を扱っている事務所が上位を占めている。
      | 清水敏 | 米国関連 | 13:42 | comments(0) | trackbacks(0) |

      【雑誌】KTKニュース2007年3月号
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        KTKニュースの2007年3月号が机の上で他の書類に埋もれていた。何気なく開いてみたのだが、これが実務に関してずいぶんと示唆的な記事が多かった。

        まず第一に、「リアルタイム:マークマン・ヒアリングに至るまでの手続き」(ジェームス・アームストロング3世)が挙げられる。私が米国でアームストロング氏にあったのはもう随分と前だが、写真を見る限り、あのことろそれほどお変わりはないようだ。今回の記事では、マークマン・ヒアリングまでに訴訟当事者の弁護士事務所がどのような手続きをどのようなタイムスケジュールで行うか、が説明されている。私にとっては、米国での実務に関する情報、特にマークマン・ヒアリングという非常に興味深い制度に関する情報であり、とても面白いものであった。

        第二に、村林隆一先生の「『意匠法等の一部を改正する法律』と罪刑法定主義」という文章である。今回の法改正で、特許法第196条として「特許権又は専用実施権を侵害した者」の後に「(第百一条の規定により特許権又は専用実施権を侵害する行為と見なされる行為を行った者を除く。)」というカッコ書きが挿入されて間接侵害がこの196条における「侵害した者」にはあたらないことが明らかにされ、さらに196条の2として間接侵害者に対する罰則を定める条文が追加された。村林先生は、この改正によって、間接侵害者が196条の対象ではないことが明らかにされたことはよいことだが、法改正前の196条も同様に間接侵害者を対象にしたものとは解釈するべきではない、とされ、従来の通説として196条の「特許権又は専用実施権を侵害した者」に間接侵害者も含まれるとする解釈がなされていたことに異議を申し立てられている。
         私自身は、刑事罰を定めたこのあたりの条文にはそれほど興味を持たず、今までこんなことを考えたことはなかったが、法律家というのは、条文のあらゆる箇所について予め解釈をしておくべきこと、同時に通説がどのようなものであるかも調べておくべきこと、を日頃から実践されているのだと実感した。

         第3は木村先生の書評(というか特許事務所評)で、「倉増一著『特許翻訳の基礎と応用』推進の弁」である。木村先生の舌鋒は相変わらず鋭いが、ここでは図書を持ち上げ、返す刀で特許実務家と特許翻訳者とを切って捨てる。木村先生のこうした文を読んでいると、痛快ではあるが、読み終わってから考え込まざるを得ない。英語も日本語もままならない私としては、さらに精進するしかないのだが。

         私自身もかつてKTKニュースの編集長を(といっても編集部員は他にいなかったが)つとめたことがあり、様々な弁理士・弁護士の方のご投稿を頂いたことがある。当時は、基本的にいただいた原稿は全て掲載する方針だったのだが、たった一度だけ、どうしてもこれは掲載できない、と判断した原稿があった。その原稿については筆者にお話をしてお詫びをいい、引き取っていただいた。ただ、それはあくまでも特殊な例である。基本的にKTKニュースは、実務的な話題あり、日常の身辺雑記あり、法律論あり、判例論ありで、肩のこらない、非常に面白い雑誌である。しかもこのKTKニュースは、意外なところでも読まれている。たまに大学の先生の論文に引用されていることもなきにしもあらず、という気がしないでもないように思う。
         というわけで、今月号のKTKニュースを読むことをおすすめする。

         といっている間に、そろそろ4月号が届くころだ。
        | 清水敏 | 図書 | 18:40 | comments(0) | trackbacks(0) |

        特許庁:進歩性検討会報告書
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          特許庁は、このページで、進歩性検討会報告書を公開している。最近何かと話題になる進歩性に関する、特許庁、産業界及び弁理士有志による検討結果である。是非ご一読を。
          | 清水敏 | 知財実務 | 13:03 | comments(0) | trackbacks(0) |

          マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー
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            評価:
            エリザベス・イーダスハイム
            ダイヤモンド社
            ¥ 1,890
            (2007-03-02)
            いつの時代にも、自分の考えを持ち、その考えにしたがって他人を説得しながら、かつ他人の共感を得ながら生きていく人がいるものだ。マービン・バウアーはまさしくそうした人物の一人だろう。

            プロフェッショナルとして、クライアントにとってもっともよいことは何か、を基準にして物事を考えるバウワーの生き方は、弁理士(特に事務所を運営する弁理士)にとっては極めて示唆的である。自分はこうした考えを徹底しているか?クライアントにとってよいことを基準に考えているようで、実は自分の事務所のことを考えているのではないか?引き際をわきまえているか?等々、考えさせられることが極めて多い。

            何よりも、話が面白い。登場する人物もそうそうたる人たちばかりである。自分がこの場面にいたら、とワクワクすること請け合いである。

            弁理士を始めとするプロフェッショナルにとって、必読の書といえる。
            | 清水敏 | 図書 | 12:43 | comments(0) | trackbacks(0) |

            日本・英国 特許審査ハイウェイを7月から開始予定
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              特許庁発表によると、日英特許庁は、特許審査ハイウェイの試行を7月から開始することを3月26日に合意する予定。

              特許審査ハイウェイとは、出願人の選択に応じて、第1国の特許庁で特許可能と判断された出願については、第2国の特許庁において簡易な手続により早期審査を受けることができるようにするもの。

              米国、韓国についで英国が3番目。
              | 清水敏 | 相互協力 | 12:31 | comments(0) | trackbacks(0) |

              【書籍】Case Law of the Boards of Appeal (Fourth Edition)
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                EPOの標記書籍については、第5版が既に出版されたというお知らせが来ているが、第4版については、EPOのウェブページからpdf版がダウンロードできる。第5版がダウンロード可能になるのはいつのことだろうか?

                ちなみに、第5版はここで注文できる。
                | 清水敏 | 知財実務 | 09:34 | comments(0) | trackbacks(0) |

                【特許庁】「方式審査便覧」の改訂(案)についての意見募集
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                  経済産業省(特許庁)は、標記のとおり、意見募集を開始した。意見・情報受付開始日は2007年3月22日、受付締切日は2007年4月20日。

                  改訂事項のうち、主な内容は以下のとおり。
                  ○ 地域団体商標に係る外国法人の主体要件に係る基準と、提出証明書についての記述を追加する。
                  ○ 改正法により、設定登録料納付と同時に意匠を秘密にすることの請求が可能となったことに伴い、出願の却下の基準を追加する。
                  ○訴訟に関連する実用新案技術評価請求書の却下の規定を追加する。
                  ○ 設定登録料納付と同時に意匠を秘密にすることの請求が可能とな ったことに伴い、納付書の却下等の基準を追加する。
                  ○ 共同出願において、出願後に持分を届け出る場合及び届け出た持分を変更する
                  場合の手続を追加する。
                  | 清水敏 | 日本 | 08:22 | comments(0) | trackbacks(10) |

                  最近読んだ本
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                    このところ忙しいので、それほど本を読む暇がない。しかも読むのに結構時間がかかった。2件のみ。

                    戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法
                    戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法
                    アビナッシュ ディキシット,バリー ネイルバフ

                    ゲーム理論についてはだいぶ以前から勉強したいと思ってこの本を買っておいたのだが、やっと読了。考え方は分かった。ただ、これを実践するためには、継続的にデータを収集しなければならないということを確認。万能の理論ではない。

                    Patent Searching: Tools & Techniques
                    Patent Searching: Tools & Techniques
                    David Hunt,Long Thanh Nam Nguyen,Matthew Rodgers

                    前半はサーチ一般に関する説明で、すばらしい睡眠導入剤である。読み出すと2分もしない内に眠ることができた。後半になり、具体的なデータベースについての話になると結構面白くなる。ただ、どうしても英語を使用する話に偏る点が日本人には不満か。
                    ともあれ、不眠に悩む人はぜひ購入の上、寝る前に読むことを勧める。
                    | 清水敏 | 図書 | 09:13 | comments(0) | trackbacks(0) |

                    特許電子図書館 審査書類情報照会サービス拡充のお知らせ
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                      通産省発表によると、特許審査の手続書類等の閲覧の無料化へのニーズに対応するため、特許電子図書館の審査書類情報照会サービスで照会可能な書類の対象範囲を拡大し、3月26日からサービスを開始することになったそうである。

                      拡大対象
                      ○出願人等から特許庁に提出された特許・実用新案に係る書類
                      (例:願書、特許請求の範囲、明細書、図面、意見書)
                      ○その他の書類
                      (例:面接記録、応対記録)

                      | 清水敏 | 知財実務 | 08:12 | comments(0) | trackbacks(0) |

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